現実科学レクチャーシリーズ

Vol.15:長谷川愛先生レクチャー(2021/8/18 開催)

現実科学ラボがお届けする「現実科学ラボレクチャーシリーズ」。
「現実を科学し、ゆたかにする」をテーマに、各界有識者をお招きして、脳科学者 藤井直敬がホストになってお話をお伺いする、レクチャー+ディスカッションのトークイベントです。
15回目となる今回は、アーティストの長谷川愛氏をお招きします。またディスカッションのゲストには、森美術館の前館長(現特別顧問)でキュレーターの南條史生氏にもご参加いただきました。

 

当日のオンラインホワイトボード


【 概要 】

  • 開催日時: 2021年8月18日(水) 19:00〜20:30
  • 参加費用:1,000円
  • 参加方法: Peatixページより、参加登録ください。お申込み後、Zoomの視聴用リンクをお送りいたします。
    視聴専用のセミナーになるので、お客様のカメラとマイクはオフのまま、気軽にご参加頂けます。

【プログラム】(90分)

    • はじめに
    • 現実科学とは:藤井直敬
    • ゲストトーク:長谷川愛氏
    • ディスカッション:長谷川愛氏 x 南條史生氏 x 藤井直敬
    • Q&A

【登壇者】

長谷川愛氏

長谷川愛
アーティスト
バイオアートやスペキュラティヴ・デザイン、デザイン・フィクション等の手法によって、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。 IAMAS卒業後渡英。2012年英国Royal College of ArtにてMA修士取得。2014年から2016年秋までMIT Media Labにて研究員、MS修士取得。2017年〜2020年3月まで東京大学 特任研究員。2019年秋から早稲田大学非常勤講師。2020から自治医科大学と京都工芸繊維大学にて特任研究員。森美術館、上海当代艺术馆、イスラエルホロンデザインミュージアム、ミラノトリエンナーレ、アルスエレクトロニカ、NY MoMAなど国内外で多数展示。著書に「20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業 」(BNN新社)

南條史生氏

南條史生
森美術館特別顧問/エヌ・アンド・エー株式会社代表取締役
慶應義塾大学経済学部、文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。国際交流基金(1978-1986)等を経て 2002年より森美術館副館長、2006年11月より2019年12月末まで森美術館館長。過去にヴェニス・ビエンナーレ日本館(1997)及び 台北ビエンナーレ(1998)コミッショナー、ターナープライズ審査委員(ロンドン・1998)、横浜トリエンナーレ(2001)、シンガポール・ビエンナーレ(2006、2008)アーティスティックディレクター、茨城県北芸術祭総合ディレクター(2016)、ホノルル・ビエンナーレ キュラトリアルディレクター(2017)等を歴任。慶應義塾大学非常勤講師。 近著に「疾走するアジア~現代美術の今を見る~」「アートを生きる」など。

藤井直敬

藤井直敬
医学博士/脳科学者
株式会社ハコスコ 代表取締役
東北大学特任教授/デジタルハリウッド大学大学院 教授
一般社団法人 XRコンソーシアム代表理事
東北大学医学部卒業、同大大学院にて博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)McGovern Institute 研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター所属、適応知性研究チームリーダー他。2014年に株式会社ハコスコを創業。
主要研究テーマは、BMI、現実科学、社会的脳機能の解明など。

【 共催 】

デジタルハリウッド大学

 

スペキュラティブ・デザイン

一般に、デザインは問題解決を志向し、人々が明示的に「望ましい」と考えているものを創り出すとされています。これに対して、長谷川さんが実践しているスペキュラティブ・デザインは、その他の「あり得る未来」をあえて描き出すことで、問題提起や議論を引き出す材料として機能するもの。「誰にでもできるように定式化されたメソッドは存在しないものの、スペキュラティブデザイン的な態度はある」と長谷川さんは語ります。

長谷川さんは、自分がどんな世界を欲しているのか、何を良しとするのか、それは誰の基準で良しとされているものなのかを問い、これまで多くの作品を作り続けてきました。

長谷川さんの作品

I WANNA DELIVER A DOLPHIN…

Human X Shark

SHARED BABY

Alt-Bias Gun

 

「より大きな現実」

ゲド戦記の原作者として知られるSF作家のアーシュラ・K・ル=グヴィンは、想像力とまだ存在していない(あるいは存在しないかもしれない)全てを内包する現実を「より大きな現実」と呼び、今現在私たちが生きている(目の前に顕現している)世界がその一部分でしかないことを指摘しました。

スペキュラティブ・デザインの提唱者の1人でもあるアンソニー・ダンは近年、彼女の言葉を引用して、現実という概念(現実そのもの)の再考が必要であると主張しています。とりわけ新しいテクノロジーとの関連において、現在社会に流通しているアイデア、信念、価値観、そしてそれらを支える「基準」や「論理」そのものを根本的に検証し、疑問視する力が必要であると。

長谷川さんは、このアンソニー・ダンのメッセージを通じて、これからを生きる私たちに必要なことを考察しました。現在、私たちはテクノロジーの急速な発展の中にあり、その特定の使い方、特定の価値観が支配的になっていることに気づきにくくなっている。他の可能性を想像することが非常に難しくなってきている。これに対して、スペキュラティブ・デザイン的な発想によって、建設的に非現実的な提案を打ち出し、根本的に異なる生き方を想像する力を養っていくべきだと言います。

長谷川さんにとって、現実とは

自由に向かって現実逃避をするために、価値観を変えていくこと。書き換え可能なもの。