現実科学レクチャーシリーズ

Vol.66 林信行さんレクチャー(2025/12/19開催)

2025年12月19日、「現実科学レクチャー Vol.66」が開催されました。本ページでは、当日のレクチャーの様子をレポートとしてお届けします。

REPORT

※本稿では、当日のトークの一部を再構成してお届けします。

体験を言葉で伝える

藤井 今日はジャーナリストの林信行さんをお招きしています。Nobiさんという愛称でご存知の方も多いかもしれませんね。というわけでNobiさん、よろしくお願いします。

 よろしくお願いします。現実と向き合うには自分を本当にさらけ出さないと語れない部分もあるのかなということで、今日はちょっと恥ずかしい部分も含めてお話ししていこうと思います。

「林さんって何をやっている人ですか?」と聞かれると、最近はジャーナリストでコンサルタントです、と言っています。取材をして色んな人に話を聞いたり、他の人がしていないような体験をして、それについてメディアで書いたり、講演という形でお話ししたりする。またコンサルティングでは、特定のクライアントに対して調査をして、それについてまとめたり考えたり、ということをしています。

それ以外にも、実は株式会社リボルバーの社外取締役をしていたりですとか、金沢美術工芸大学の客員教授や、グッドデザイン賞の審査員や、様々な活動をしています。どちらかというと言葉寄りの仕事が多い。でも、できれば情緒豊かで感情的な部分を常にどこかに持っていたいなと思っている。そんな人間です。

テクノロジーで世の中は良くなったのか

 もともとの出発点と言いますか、みなさんから見た認識もテクノロジージャーナリストというイメージが強いと思います。1990年から働き始めて、『MACPOWER』や『ASCII』といった媒体でデジタルテクノロジーの最新情報を取材して発信してきました。

1990年というと「パソコンなんて買って何するの?」っていう時代だったんですね。そこからインターネットが普及して電子メールするの が当たり前になって… iPodやiPhoneが発表された時も現地で取材していましたし、さらにはスマートフォン当たり前時代、AI時代まで。デジタルテクノロジーが世の中をどのように変えてきたかを、フロントローで見てきました。

テクノロジージャーナリスト時代は、僕自身もテクノロジーに対してすごく楽観的で、パソコンやインターネット、ソーシャルメディアが普及することで世の中が良くなっていくと信じていたんです。でも、実際はどうなったか。メールの受信量がすごいことになってかえって忙しくなったり、スパムや詐欺に繋がっていったり、ブレグジットやトランプ大統領誕生の一因にもなりました。

好きなのは素敵な未来を作るデザイン

 メディアやテクノロジーというものについて、スティーブ・ジョブズはよく自転車のメタファーで語っていました。クリエイティブで善意を持った人が乗ると、より遠くまで行って多くの人々を助けることができる。でもパン泥棒が乗ると、何倍も効率よくパンを盗めてしまう。では、この時代にいったい誰が自転車を漕いでいるのかというとそれは資本主義経済、つまりシリコンバレーのベンチャーキャピタリストやネット詐欺などのサイバー犯罪者ではないかと思うことが増えてきました。

特定の誰かの利益や、犯罪のためにテクノロジーが使われることが増えている。だとすると、テクノロジーは社会を良くしていないのではないか?と思うことがだんだん、2010年頃から増えてきました。その頃に気がついたのは、「僕はずっとテクノロジーに興味があると思っていたけれど、実は違ったんだ」ということです。

僕らのように1960年代の後半に生まれてきた人間は、チューブの中を車が走っているようなSFをいっぱい見て、テクノロジーが素敵な未来を作るんだと思ってテクノロジーに興味を持ちました。けれど、実際にはテクノロジーは必ずしも素敵な未来を作っていない。僕が本当に好きで興味があるのは、実は素敵な未来の方だったんだ、という気づきがありました。じゃあ、何が素敵な未来を作るのかというと、僕はデザインだと考え始めます 。そこから、デザインジャーナリストとしての活動をどんどん増やしていきました。

仕組みの外側からの視点

 一方、デザインは課題解決だ、とよく言われます。でもこれからはAIの時代だろうという確信が2016年頃になってから強くな ると、課題解決はAIによってできてしまうのではないか、と思うようになり、 むしろ、何が課題かを発見することの方が重要なのではないか、と思うようになります。そこからはだんだんアートの道に行き、主にメディアアートと言われる分野の作品を取材するようになりました。

我々はどうしても資本主義経済の中で生きて、毎日お金儲けをしなければいけない、そういう仕組みの中で発想してしまう。でもアーティストは、社会の枠組みから外れて発想できる人たちなんですね。マーシャル・マクルーハンの「水を発見したのが誰かはわからないが、魚でないことは確かだ」という言葉がありますが、水槽の中にいる魚には水が見えていない。アーティストは、水槽の外側からの視点を与えてくれるのではないか、と思っています。

そこからさらに素敵な未来を考える中で、22世紀に残すべき価値は何か?をひとつの軸にしようと思い、今は本当にジャンルレスに活動しています。その未来探しの旅の中で、実は日本文化こそ希望を持てる人類の未来ではないか、なんてことを最近は考えています。

“リアル現実”の強さ

 さて、ここからは「現実とは」というお話をしたいと思います。今まで、人生の中でいくつか現実とは何かを考える瞬間がありました。今回のお話を受けた時に真っ先に思い浮かんだのが、六本木ヒルズのすぐ近くを歩いていたある日のことです。

影というのは太陽の位置によってどちら側に伸びるか決まっているはずなのに、1か所だけ逆向きになっていたんです。「えっ、なんでこんなことが起きるんだろう」と立ち止まってしまって。しばらく考えてようやく分かったのが、太陽の光がどこかの窓ガラスに反射して、逆向きに光が出ているからだ、ということでした。

もしこの六本木の通りをVRで歩いていたとして、同じ影の変化が起きても「あ、これバグってる」と言って終わりだと思うんですよ。でも現実世界でこういったことに直面すると、「なんでバグが?ありえない」と考えてひと掘りする。それが“リアル現実”の強さではないか、というふうに思います。

世の中のすべてはウソ?

 さらに赤裸々に自分の半生を振り返って、いくつかの瞬間をご紹介します。僕が小さかった頃、ドイツのデュッセルドルフに住んでいたことがありました。家のすぐ裏側が森で、近くに友達がいるようなエリアでもなかったので、ほぼ毎日一人で遊んでいて。空想の友達を何人か作っていたんです。

最初は自分の主観で考えて友達に喋らせるんだけど、それだとやっぱりすぐ飽きちゃうので。ある時点で、一人一人のキャラの頭でシミュレーションして、そのキャラだったらこう言う、と結構高速で会話できるようになって。そうやって遊んでいる中で、「自分は瞬間瞬間で死んで、次の瞬間には別の人格なんじゃないか?」と思ったり、とにかく一人でいる時間が長かったので色々なことを考え、明日隕石が落ちてきて地球が破滅したらどうしようとか常に恐怖に怯えていました 。

藤井 Nobiさんはイマジナリーフレンズを覚えてるんだ。3歳とか4歳の時でしょう。そんな哲学的なことを考えていたんですか。

 そうですね。この後、日本に帰国してからは幼稚園や小学校の同級生と毎日遊ぶなど忙しく、あまりそんなことを考えている時間は減りました。ある意味、ドイツにいた幼少期が一人でいた時間が長かったこともあり、人生の中で一番哲学していた時間かと思います。「自分に見えている色や形が他の人には別の色や形に見えているんじゃないか」とかもよく考えていました 。僕が三角と思っているものが他の人には四角に見えている。でもその人が一生ずっと四角を三角と呼んでいるから、話をすると辻褄が合っているだけなんじゃないかとか、そういうのイマジナリーフレンドとの会話を通してシミュレーションとかもしていました。深く考えれば考えるほど、世の中が全部ウソなんじゃないかと本当に怖くなってしまって。

毎晩布団の中で怖い怖いって考えているうちに、デカルトの「我考える故に我あり」じゃないですけど「世の中が全てウソだったとしても、自分が今、自分の存在について考えている。その考えること自体は存在している」と気がつきました。これが幼少期ながら、自分にとっての“現実認識第一号”だったかなと思います。

人生で初めての瞑想体験

 このあと日本に帰ってきて、そこで僕、臨死体験をしてるんですよ。

藤井 ええ!何ですか、それ。

 扁桃腺をとる手術をして、その時に麻酔が失敗したか何かで臨死状態になったみたいで。最初はカラフルな馬が回っていました。 後に「走馬灯」という言葉を知った時には「あの馬のことか」と思いました。それがしばらく続いたあと一度、真っ暗になり、気がつくと 真っ白な空間にいました。 自分はその中にいるんだけれども何も考えずにただそこにいるんです 。その後に麻酔が切れて目覚めた時に「何も考えず、感じず、ただそこにいた」ということを思い出したのですが、その時の スッキリ感がすごくて、とにかく気持ち良かったのを覚えています。すぐに口から血を吐いて痛みが襲ってくるのですが 。多分、あれが人生で初めての瞑想体験だったと思います。だから、今でも瞑想とか好きなんですよ。

藤井 今もその真っ白な状態に瞑想で行けるんですか?

 いや、全然行けません。でも、それが目標になっていると思います 。

藤井 なるほど、それが至高体験なんだ。

人間の記憶は当てにならない

 それからまた今度はエクアドルという国に移り住みます 。もうルール無用な世界というか、めちゃくちゃなんですね。日本やドイツはすごくルールがしっかりしている国だったけれど、ルールも人間が作ったフィクションでしかないと学んだところもありました。

そのエクアドルではドイツ人学校に通っていたのですが、「チーノチーノ(中国人中国人)」って言われていじめられていたのですが。小3で日本の 教育を受けた方が良いと親戚の家に預られ、日本の小学校に通うと今度は「外人外人」っていじめられるんです。それで何が起きたかというと、日本語より上手かったくらいのドイツ語とスペイン語を完璧に忘れるんですよ。

そこからがまた驚きなんですけど、ドイツ人の 親友との会話の記憶が、頭の中でいつの間にか全部ドイツ語から日本語に置き換わっているんですよ。ドイツ語を忘れた時点で僕はドイツ語を話せないので、勝手に脳の中ですり替わっていた。人間の記憶ってあてにならないなと思った出来事でした。

言葉によるコミュニケーションの限界

 そうした半生の紆余曲折を経て、僕は現実をどのように考えたりとらえたりしているのか。今はやっぱり、講演や執筆を活動の中心にしていて、ロゴスというか、言葉でのコミュニケーションが多い。Xでもフォロワーが20万人くらいいて、すごく大勢の人とやりとりをしている。

そこで言葉でのやりとりを重ねれば重ねるほど、幻滅する部分も多くなっていてですね。例えば「日本文化っていいよね」と僕が言葉を発しても、その瞬間みなさんが頭の中で思い浮かべる日本文化って、たぶん全員違いますよね。人によっては伝統工芸かもしれないし、食文化や、漫画・アニメかもしれない。解像度がvagueというか、ぼやっとした状態でコミュニケーションをしている。

でも、今の世界はすごく言葉を中心にしているじゃないですか。それに対して、ちょっと危機感を覚えていますし、AIもプロンプトって言葉ベースじゃないですか。それによって作り出せる現実には、限界があるんじゃないかと感じます。

非言語領域の体験

 ですから、バーバルなものに偏重しているAIの時代になればなるほど、非言語の認知が重要になってくるんじゃないか、ということをよく考えます。AIは身体がないので、非言語領域、五感でいう味覚とか触覚とか嗅覚とか、今この瞬間にしかないような感覚が大事なのではないかと。

なので、僕も香道やワインといった体験をしているんですが、実は悔しいことにこういう体験が苦手で。 結局言葉にできないと記憶に定着しないんですよ。「なんか甘い系の香り」ぐらいの解像度だと、次も甘い香りがきた時に区別ができない。香りが長期記憶と結びつくという部分も確かにあるなと思いつつ、もっと言葉の解像度をあげないと短期記憶には落とし込みにくいのかな?もっと言葉以外の感覚で区別や記憶ができないかななどと考えたりしています。

“今この瞬間”にフォーカスする

 今のようにノイズが多い時代には、“今この瞬間”にフォーカスする瞑想のようなものが重要だと改めて思います。マインドフルネス瞑想のニーマルメソッドで知られるニーマル・ラージ・ギャワリさんという方とご縁があって、彼によると人間は常に過去のことを考えてくよくよしたり、未来を考えて不安になったりすると。けれども、自分がコントロールできるのは今この瞬間しかないんですね。だから、マインドフルネスでは今この瞬間にフォーカスする。

そうした瞑想ができると、ノイズが多い時代に自分の心をリセットできて、そのゼロ状態が分かると、自分の特性をより認知しやすくなるんじゃないかと考えています。僕が今年衝撃を受けたのが、真鍋大度さんの『細胞の耳』というアート作品で。人間の脳オルガノイドに音楽を聴かせると、もう細胞レベルでも好き嫌いみたいな反応が分かれてくるんですよ。なので、人間の個性って結構だませない部分があるんじゃないかと。

どうしても仕事をしていると「自分はこうでなければいけない」と自分に言い聞かせて、生来の姿に戻れなくなってしまうことがあるので。その感覚を取り戻すのが非常に重要だと思っています。

他者と接することで見えてくる自分の境界線

 自分がどういう人間かを発見するためには、自分と違うものと接することが大事です。旅をしたり、異分野の勉強をしてみたりすると、自他の境界が分かって、自分の輪郭が見えてくる。

人間は「これは好きですか?」と聞かれても、本当に好きなのかわからないことがよくあります。実は人間は「これは嫌い、これは苦手」というものの方が認識しやすいのではないかと思っています。この「これは自分ではない」と思う輪郭の外側の点をたくさん打つことで、段々と自分の輪郭が見えてくるのではないかと思っています。

そして現実というのは、こうした自分の輪郭と、その周囲にある物理現象との間に浮き立ってくるのではないかと思っています。だから一人一人で現実は違っていて、自分の現実を豊かにするためには、やはり自分がどういった輪郭を持っている人間かを認識することではないかと考えています 。

まあ、現実の世界にはね、テクノロジー業界とか、デザイン業界とか、そういった壁は一切なくて、全部つながってひとつの世界を作っているわけですし。僕も業界の壁を破っていろんな活動をしていますが、これからはこうした壁のない活動が重要ではないかと思っています。

呼吸から無意識にアプローチできる?

藤井 ありがとうございます。LLMに身体性がないっていう話ですけど、昨日今日と京都で開催されていた複雑系研究会に参加していて。そこではLLMにも身体性はあるんじゃないか、という議論していたんですね。人が作った言語には身体性は含まれているから、それをベースにしたLLMも概念としての身体性は持っているんじゃないかと。

 それはバーバルのフィルターを通した身体性ですよね。一方で、人間って例えば精神状態が落ち着かない時に、唯一自分でコントロールできる呼吸に意識を向けていくと落ち着いてくるようなことがあるじゃないですか。そういった身体から入って変わるというのは、やっぱりないですよね。

藤井 そうですね。僕も意識と無意識の間に現実があるということをずっと言っていて、じゃあ無意識にどうやって介入できるのかと考えると、呼吸なんですね。それって人類が何千年も考え続けていて、全ての人に共通なのが呼吸なんだろうなと。ヨガとか坐禅とか、瞑想系のテクニックがいろいろありますけど、呼吸抜きには何も進まないですよね。

ノンバーバルな部分の感覚

藤井 今この瞬間で言うと、最近僕が面白いなと思って見ているのがNetflixの『ラヴ上等』で。あの登場人物の皆さんは本当に今ここに生きてるじゃないですか。元ヤンキーだけど社会的には大人になっているので、メタと言語と非言語のレイヤーがあった時に、普段はちゃんとメタのレイヤーで働いてるんですよ。でも番組で恋人を14日間で作るとなると、メタのレイヤーだと間に合わない。ノンバーバルのレイヤーが出てくるんですよね。

 そうですね。

藤井 なんだろう、闘技場に連れてこられた拳闘士みたいになって。あそこにいる時は本当に瞬間の勝負なんですよね。だから、ノンバーバルじゃないとスピードが出ないんだと思って。

 それで言うと、たしかに一般的な社会人はバーバルの部分に支配され過ぎちゃって、ノンバーバルの部分の感覚を上塗りしているところがありますね。

異なる時間軸で考えてみる

藤井 Nobiさんはテクノロジーや新しいものを世間に紹介するところからシフトしているというお話でした。今後の活動についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

 いくつかありますけれども、色々なことを見てきて手放しでテクノロジーやテクノロジー企業を礼賛できなくなってしまったというのはあります。本当に良かったんだろうかと疑問が大きくなってきて、今はやっぱり時間軸が重要だと思っています。

ジョブズも引用した「Stay hungry, stay foolish」という言葉でも有名なスチュアート・ブランドが、Long Now Foundationという組織を作っていて。Nowがこの一瞬のコンマ1秒を指すこともあれば、この前後1秒や、この1時間、今日1日くらいを指すこともありますよね。Long nowは、千年とか1万年くらい。それぐらいのロングタームシンキングを我々は身につけた方が良いんじゃないかということを言っています。

テクノロジー業界やファッション業界ってサイクルが早過ぎて、そのために無責任なものづくりが多く行われてきました。その一方で、自然などはすごくゆっくり変化していく。階層的に違う時間軸で流れているので、そうした視点を持つと、ちょっと世の中の認識の仕方が変わるのかな?と思います。

藤井 同じ階層でもまた、時代によって変わってきますよね。

コミュニケーションの中で起きるキャリブレーション

藤井 僕はもう、みんながそれぞれの現実を生きてると思うんですけど、こうやってNobiさんと会話するじゃないですか。そうすると、二人の現実がマージするんですよね。コミュニケーションの中でキャリブレーションが起きてるんだと思うんです。相手に通じようとか、楽しんでもらおうとかで振る舞いも変わるし、喋り方も変わる。それが交差するところがやっぱり面白い。SNSでの交差は、あんまりキャリブレーションにならない気がしますね。

 スティーブン・ホーキング博士の講演で「生物は遺伝子交換によって進化してきたけれど、人類は言葉の交換で1世代の中で進化する」というお話を聞いたことがあって。でも確かに、SNSだとなかなかね。それを変えるデザインみたいなものができるといいかもしれないですね。

藤井 今のSNSの、いろんな人の意見が聞けたり、すごいスピードで共有できたりするところは良いと思うんだけど。その特徴を残したまま、何かできればいいですよね。

 過去の例だとインターネット博覧会に関わっていた友人 が、サイトをめちゃくちゃキレイにして、汚い言葉を書くと目立っちゃうくらいカッコいいデザインにしたら、あんまり酷い言葉は書かれなかった、と言っていましたね。インターネット版の割れ窓理論みたいな感じかもしれません。

林さんにとっての「#現実とは」

藤井 最後に、Nobiさんにとっての現実とはをひと言でお願いします。

 そうですね。一過性のマルチバースでしょうか。やっぱり、現実の認識の仕方は人の数だけあるというか、価値観の数だけあるような気がするし。複製できない、一回だけのものが現実なのかなと思うので。

藤井 ありがとうございます。世の中って結局は一過性で出来上がっているけれど、繰り返しがないから科学にのせられない。どうにかして科学にのせようとすると、条件を統制して何回でも同じことが起きるように物事を考えて、予測をして、ということになるので。その範囲で社会が構成されちゃうとつまらないですよね。そうではなくて、何が起きても大丈夫だ、むしろそれを楽しもうぜ、という方がいいんじゃないかと思います。

(テキスト:ヨシムラマリ)

登壇者

林 信行

Nobi(ノビ)の愛称でも知られる。テクノロジー、デザイン、アートを基軸に22世紀に残すべき価値を模索し発信するジャーナリスト/コンサルタント。1990年からIT業界を築いたビジョナリーや経営者などを多数取材し、パソコン、インターネット、スマートフォン、ソーシャルメディア、AI普及の最前線を取材。2010年頃からテクノロジーは必ずしも人を豊かにしないと考えを改め、良い未来を生み出すデザイン重視の姿勢の啓蒙に注力。AI時代の足音が聞こえ始めた2015年頃からは課題解決を探すデザインアプローチよりも、課題や問いそのものを探すアートのアプローチが重要と現代アートや教育の取材にも注力。また2024年からはジャポニスム第3の波「Japonisme 3」の到来を確信して日本語と英語でのバイリンガル発信に力を入れ始めている。「ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した」など著書多数。リボルバー社社外取締役。金沢美術工芸大学名誉客員教授。 

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藤井 直敬

株式会社ハコスコ 取締役 CTO
医学博士/XRコンソーシアム代表理事
ブレインテックコンソーシアム代表理事
東北大学医学部特任教授
デジタルハリウッド大学 大学院卓越教授
MIT研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダーを経て、2014年株式会社ハコスコ創業。主要研究テーマは、現実科学、適応知性、社会的脳機能の解明

主催

現実科学ラボ